編集者(日本)

ワークデイのCTOが語る「CTOの魅力」とは

特集
2025年04月01日2分
Chief Technical Officerキャリア

今回、「Leadership Live Japan」に出演するゲスト、ワークデイ株式会社CTO/最高技術責任者の小今井裕氏をお迎えし、CTOのキャリアや仕事観、やりがい、魅力などについて語ってもらいました。

小今井裕氏
画像提供: CIO.com

ビジネスとITの架け橋:グローバルITリーダーの軌跡

私はIT業界で25年の経験があり、特にクラウドとネットワーキングの分野で働いてきました。1995年、インターネット機能がWindowsに実装され、Windows 95がリリースされた年に就職しました。

大学4年生の時、ネットワークの可能性に強く惹かれ、アメリカの通信会社AT&Tに入社しました。その後、日本に帰国し、ネットワークストレージ仮想化のベンダーに転職しました。転職の理由は、その会社の技術に感銘を受けたことと、SEとしてだけでなくビジネスマンとしての自分の力を試したかったからです。そのため、あえて小さな会社を選びました。

その後、ネットワークベンダーで約8年間働き、数十名規模のマネジメントや企業買収後の統合などを経験しました。直近では、VMwareという会社で12年間勤務していました。

この間に多くのスキルを身につけ、様々な経験を積むことができました。特に大きな経験としては、APJ(日本を含むアジア太平洋地域)のグローバルアカウント、つまり日本、韓国、インド、オーストラリアなど、グローバルの大企業のお客様を担当するソリューションコンサルタントチームをリードしたことです。

最後に、日本のトップ20社ほどのお客様を担当し、ITの価値をビジネスの価値に変換する提案を進めるチームをリードしました。エグゼクティブメンバーの一人として、お客様やパートナーの支援を行ってきました。

ミッションクリティカルな成功事例:日本のITがアジアにも波及

私はソリューションコンサルタントとして、米国初の革新的なソリューションを迅速に日本やアジアのお客様やパートナーに提供するプロジェクトを数多くリードしてきました。その中で、お客様のアジリティ向上やITの効率的な運用、ROIの向上に貢献できたと考えています。また、ITパートナーに対しては、先駆者利益の最大化にも寄与しました。

よく日本のITは欧米に比べて遅れていると言われますが、日本で導入したシステムをさらに日本に適した形で導入し、それを海外やアジアに展開することも行いました。特にミッションクリティカルなシステムに関しては、日本の事例がアジアでも非常に有効であることを強く感じました。

このように、日本のビジネスの成長の象徴となるような「リファレンスケース」となるプロジェクトに携わることで、お客様のITの高度化に少なからず貢献できたと考えています。

顧客と共に成長:革新技術で築いた信頼と実績

前例のない導入や大規模なプロジェクトを進める際、技術的には実現可能であっても、顧客の導入事例や実績が重視されるため、簡単には進められないことが多々ありました。そのような中で、ソリューションやテクノロジーの詳細をお客様に説明する機会を多く持ちました。新しいソリューションの場合、米国の開発メンバーと直接話すこともありましたが、私自身がテクノロジーをキャッチアップできたのは、お客様と一緒に新しいソリューションやテクノロジーを正しく理解する機会を持ち続けたからだと考えています。

また、海外との関係構築についてですが、本社側も日本のお客様やビジネスに関心を持っているとは思いますが、こちらからアプローチしないと理解が深まらないことが多いです。日本人は「日本は特有だから」とアプローチを避けることが多いですが、まずは「日本を正しく理解してもらう」ことが重要です。私はビジネスプランを持って本社に赴き、日本法人や自分自身を本社に売り込むことも行いました。

お客様のビジネス構築と同様に、社内でもステークホルダーとの関係性をしっかり構築し、相手にとってのメリットを分かりやすく説明して理解してもらうことで、Win-Winの関係を築き、プロジェクトをスムーズに進めることができました。最終的に実績を作ることで、日本法人や自分自身の信頼を勝ち取り、良いスパイラルに入ってビジネスが回り始めるケースを多く見てきました。

少ないリソースで大きな成果をだす:Less is More(レス イズ モア)の実践

私がグローバルビジネスをリードしていた時、あるお客様で複数のプロジェクトを立ち上げるためのビジネスプランを作成していました。そのプランを上司に説明する必要があり、その中の一つに「統合プロジェクト」が含まれていました。

私はチームのリソースが複数のプロジェクトでも対応できると考えていましたが、上司はお客様のリソースも考慮する必要があると指摘しました。より大きな統合プロジェクトにすることで、お客様にとって大きな効果を早く得られ、ROI(投資収益率)やPL(損益計算書)を大幅に向上させることができると説明されました。その時、上司が言った「Less is More(レス イズ モア=少ない方が多い)」というフレーズが非常に印象に残りました。

このフレーズを聞いた時、フォーカスすることの重要性を再認識しました。「Less is More」とは、少ないリソースや短い時間で対応することではなく、同じ時間や工数を正しく使えば何倍もの結果を出せるという教えです。この言葉を信じてプランを書き直し、実際に何倍ものビジネス成果を上げることができました。

それ以降、私は心の中で「Less is More」のフィルターを通して様々な決断を行っています。

より具体的なCTO/最高技術責任者の仕事観、やりがいや魅力に焦点を当て、リーダーシップやITリーダーへの効果的なアドバイスなど、小今井氏に話を聞きました。詳細については、こちらのビデオをご覧ください。

CTO/最高技術責任者としてのやりがい、魅力について:

一般的にCTO(最高技術責任者)の役割は、特に外資系企業の本社では大きく3つあると考えています。

  1. 継続的なイノベーションを起こす環境を作ること。
  2. 自社のテクノロジーの方向性をマネジメントレベルで決定すること。
  3. テクノロジーを正しく市場に伝えること。

国内におけるワークデイの現状について言えば、私たちのテクノロジーは非常に優れていますが、日本で10年間ビジネスを展開しているにもかかわらず、まだ知名度が低いです。CTOとして、日本市場にWorkdayのプラットフォームテクノロジーをしっかり理解してもらうための活動が必要だと考えています。

また、日本のIT状況は欧米と少し異なります。日本ではITサービスやシステムインテグレーター、つまりパートナー企業が多くの支援を提供しています。そのため、日本ではお客様だけでなく、パートナー企業にもワークデイのテクノロジーを理解してもらい、パートナーのソリューションと統合して新しいイノベーションを起こすことが重要です。

特に「パートナーエコシステム」が広がることで市場も変わってくると思います。私自身も過去にそのような市場の変化を見てきましたので、パートナー企業のビジネス開発にCTOとして関与できることは非常に魅力的だと感じています。

リーダーシップに関して、成功するCTO(およびマネジメント層)に必要なことは何ですか?

DX(デジタルトランスフォーメーション)の話をする際、よくビジネスの中心に「ピープル」、「プロセス」、「テクノロジー」を配置した図を描きます。私もその図をよく使いますが、優秀な人材、効率的かつガバナンスの効いたプロセス、そして優れたテクノロジーを持つことは非常に重要です。しかし、それだけでは不十分であり、それらを有機的に結びつけることが重要だと考えています。

つまり、ステークホルダーとの関係性を構築し、それらを線で結んで三角形の面に変える力が重要です。さらに、人を巻き込む力も必要です。三角形の面を四角形、五角形、六角形に広げていくような複合的な力が求められます。

この力を大きく3つに分解すると以下のようになります:

  1. 仮説を立てながら、先を見据えたシナリオを描く力。
  2. 信頼力。人やメンバーに信頼されること。
  3. 熱量・パッション。自分がやりたい、やり遂げたいという強い意志。

もちろん、他にも重要な要素はたくさんありますが、私の経験上、これらがリーダーシップにおいて重要な要素だと考えています。

ITリーダーを目指す人たちにどのようなアドバイスをしますか?

人を巻き込む力についてお話しましたが、自分から巻き込まれる気概も必要だと考えています。リーダーシップコーチングの中で、以前の上司から「Be Humble(謙虚であれ)」というアドバイスを受けました。これは謙虚でありながら貪欲であれという意味で、メンバーの話をしっかり聞くだけでなく、自ら積極的に聞きに行くことが重要だと捉えています。

また、点を線に結びつける行動力も必要です。自らアイデアを持って点を面に結びつけることで、行動を起こし、どこかのタイミングで必ず自分で判断し決断する必要が出てきます。これが非常に良い学びになると考えています。

普段から、私は可能な限り様々なことに関わるように努め、自分から働きかけるようにしています。

今後の展望、中長期的な取り組みについて:

昨今の政治や経済の変化が非常に速く、経営データ基盤がそれに追いついていないとお客様から伺っています。この先が見通せない状況で、経営に必要な人事や財務データのリアルタイム化、経営に必要なデータ分析、プランニングのためのオンデマンドデータの可視化が求められています。

Workdayは過去10年間、AIの開発に取り組んできました。その結果、人事や財務の業務効率を大幅に向上させることができました。これは、AIが既にプラットフォームに組み込まれているため、お客様がAI基盤を構築することなく、すぐにAI機能を利用できるからです。これにより、様々な成果を上げています。

CTOとして、AIの観点からやりたいことは、まずAIの活用を促進することです。既に人間とAIが共存する世界が到来しており、AIを活用することでどのように人事業務の効率化が図れるかをお客様に説明しながら進めていきたいと考えています。

また、経営はチームプレーと言われますが、経営をデジタルで変革する観点から、これまでITやデジタルテクノロジーを活用して業務変革を牽引してきたCIO(最高情報責任者)に加え、CHRO(最高人事責任者)やCFO(最高財務責任者)とも連携していく必要があります。

私のこれまでのプラットフォームの経験を活かし、CIO、CHRO、CFOをデジタルで強固に結びつけることで、経営のデジタル変革を支援したいと考えています。

日本のエディトリアル・ディレクターとして、CIOのコンテンツキュレーション、カスタムコンテンツ、業界リサーチ、イベントなどを担当。また、CIOウェブサイトのビデオインタビューも担当しています

 

企業間コンピューティングからエンタープライズネットワーキング、ソフトウェア開発まで、さまざまなテクノロジー分野で豊富な経験を持つ。

 

日本企業が直面する問題や、CIOをはじめとするエグゼクティブのビジネス・技術領域について深い理解を持ち、ローカルマーケットに根ざした視点で編集コンテンツを制作している。 Foundry入社以前は、大手ローファーム、調査会社、コンサルティング会社にて、複数の異なる業種にわたる業務に従事。ビジネスとテクノロジー分野における彼の深い知識と経験は、CIOにさらなる編集上の価値をもたらすだろう。

 

 

As the editorial director for CIO Japan, Nobumasa Takeuchi is responsible for CIO's content curation, custom content, industry research, and events. He is also responsible for the video interviews for CIO Japan's website.

 

He has extensive experience in various technology fields, from business-to-business computing to enterprise networking and software development.

 

He has a deep understanding of the issues facing Japanese companies and the business and technical domains of CIOs and other executives, and produces editorial content with a local market-based perspective.

 

Prior to joining Foundry, he worked across multiple different industries at major law firms, research companies, and consulting firms. His deep knowledge and experience in the business and technology fields will bring additional editorial value to CIO.

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